PEOPLE

世田谷という地が多様性ある魅力的な
「働くひと」たちの場であること、

地元に素敵な店舗や企業がいることを発信していきます。

Dogsalon LiGAR 代表 久保直樹さん
08

南烏山

ペットブームのいま、飼い主や地域との縁を大事にしたい

Dogsalon LiGAR 代表 久保直樹さん

犬は大事な家族の一員

 京王線の千歳烏山駅から徒歩約10分、旧甲州街道沿いに店舗を構える犬専門のトリミングサロン『Dogsalon LiGAR』。2016年にオープンし、2021年10月に現在地に移転したばかりの店内は、明るく開放的。アメリカの西海岸を思わせる、スタイリッシュなインテリアが魅力的だ。
「千歳烏山周辺は愛犬家が多い土地。ペットというより、家族の一員として犬と暮らしている人もたくさんいますね」と話すのは、オーナーの久保直樹さん。
 千歳烏山は都心へのアクセスが便利なこともあり、幅広い世代が暮らし、街全体に活気がある。「気さくで明るい住人が多く、店舗外でも飼い主さんとコミュニケーションをとれるのが嬉しい」と、久保さんが言うように、店の利用者は9割以上が千歳烏山の住民で、リピーターがとても多いそうだ。

移転したばかりの店内は、西海岸風の洗練された空間

移転したばかりの店内は、西海岸風の洗練された空間

 埼玉県本庄市出身の久保さんは、池袋や仙川近くのトリミングサロンで働いていたのちに独立。6坪の小さな店からスタートした。トリミングサロンは数多いが、フォトスタジオを併設する店は珍しい。ペットに愛情を注ぐ飼い主の想いに応えたいという、久保さんならではのサービスだ。
「トリミング後の愛犬の可愛さは、やっぱり特別なものです。SNSに愛犬の写真を載せたいという要望が多いこともあって、撮影は人気のサービスですね。前もって『紅葉や桜を背景に屋外でも撮影してほしい』など、具体的に相談していただければ、様々なシチュエーションで写真を撮影できます」と、久保さん。

シャンプーやカット後に撮影を行うサービスが人気

シャンプーやカット後に撮影を行うサービスが人気

実際、取材中にも「3頭の愛犬の写真を年賀状に使いたいので、撮影してほしい」というお客さんが訪れていた。聞けば、数年来の常連だという。お客さんとの距離が近く、気軽に話ができる環境も、久保さんが考える千歳烏山の魅力なのだそうだ。そして、お客さんの喜ぶ姿は、何物にも代え難いやりがいに繋がっているのだという。

取材時はお年賀にぴったりなセットを組んだ撮影

取材時はお年賀にぴったりなセットを組んだ撮影

愛犬家が抱える問題とは

 久保さんは東京青年会議所世田谷区委員会に所属しており、生活全般にわたる困りごとの相談窓口「ぷらっとホーム世田谷」の担当者と話す機会があった。その中で、地域が抱えるペットの問題に関心を持ち始めたと、久保さんは話す。
「世田谷区は23区で最大の人口を有しています。同様に、ペットの飼育登録数も最多と言われており、そのため、様々な問題が浮き彫りになってきています」
 ひとつは、ペットの保険に関する問題だ。ペットを愛するあまりお金をかけすぎて、生活を圧迫しているケースがあるという。掛け捨て型のペット保険が多いことも、飼い主に大きな負担になる。久保さんは、積立式の保険が作れないかと考えており、積極的に提案していきたいと話す。

ドッグフードやおやつなどを販売

ドッグフードやおやつなどを販売

 また、久保さんは、東日本大震災で被害を受けた宮城県石巻市のトリマーを訪問したことで、愛犬家が防災意識をもつことの大切さを痛感したという。そもそも、災害発生時の避難の仕組みも、人とペットでは大きく異なり、大きく分けると「同行避難」と「同伴避難」がある。同行避難は、避難所にペットとともに避難できるが、ペットの滞在スペースが人と別になる。避難所で人とペットが同じスペースに滞在できる同伴避難は、全国的にまだ普及しておらず、世田谷区の避難所でも同行避難となる。
 久保さんが言う。
「首都直下型の地震が起きる可能性が叫ばれているため、危機管理についてお客さんと話をすることも多いのですが、愛犬家は災害発生時のリスクが大きいのです。同伴避難ができる施設があれば安心できるはずなので、行政の協力も不可欠になってきます。目下、私はトリマー同士で協力し、安心して避難できる場を設けられないかと検討しています」
 防災用品の備蓄は、ペットのためにも重要だ。久保さんも、店内にドッグフードなどを備蓄しているし、ペット用の“ウンチが臭わない袋”もある。「備蓄の重要性や、東日本大震災で被災した愛犬家の実体験なども発信していきたい」と、久保さんは意気込む。

インタビューに応えてくれた代表・久保直樹さん

インタビューに応えてくれた代表・久保直樹さん

 ペットの需要は右肩上がりだ。特に、昨年から新型コロナウイルスの感染拡大により、自宅で過ごす時間が増えたことで、ペットの飼育頭数は増加傾向にあるという。久保さんの店にも、2020年の7~8月頃から新規のお客さんが増えているそうだ。その一方で、飼育放棄などで保護団体に持ち込まれるペットも増えるのではないかと、久保さんは懸念している。
「今後は、商店街振興組合などに入り、地域の譲渡会にも協力していきたいですね。実は、移転前の店舗では里親探しの手伝いをしたいと思っていたのですが、動物を24時間おいていいテナントがなかったため、できなかったのです。何より、不幸な目に遭うペットが増えないよう、飼い主に対する啓発活動は積極的に行っていきたいですね」

ウェルシュテリアという犬種のマノちゃんは店のアイドル

ウェルシュテリアという犬種のマノちゃんは店のアイドル

トリマーが⾧く働ける環境を

 LiGARのスタッフは久保さんを含めて4人で、うち、トリマーは2人在籍している。
「トリマーはかつて人気の高い職業でしたが、いわゆる“3K”の職場ということもあって、離職率が高い。私が専門学校を卒業して10年経ちますが、現役で働いている同級生が1人もいない状態です」
 そのため、久保さんは労働環境の改善にも積極的だ。そもそも、トリミングは集中力が求められる仕事で、出産直後は体力的にも精神的にも負担になる要素が多い。そのため、事務職やマーケティングなど、出産後も職場に復帰しやすい体制をつくりたいという。

  • 飼い主からペットを預かり、カットや爪のお手入れを丁寧に行う

    飼い主からペットを預かり、カットや爪のお手入れを丁寧に行う

  • シャンプー中は気持ちよくて寝てしまう子も

    シャンプー中は気持ちよくて寝てしまう子も

 コロナ禍の中でもお客さんが絶えることがないが、久保さんは多店舗展開の計画はないと話す。店名の“リガール”には“繋がる”という意味がある。地域のコミュニティを大切にすることが、久保さんのモットーだ。今後も地域密着型で取り組み、スタッフの雇用体制の強化に努めたいという。
「千歳烏山は、犬の散歩をする人をいつも見かけますし、飼い主同士で挨拶をしている場面を見かけます。やっぱり、愛犬家同士だと職業や年齢の垣根を越えて、交流しやすいんですよ。当店を利用しているお客さんの間にも、コミュニティを作っていきたいですね」
 久保さんは、こうした取り組みが、ゆくゆくは地域のためになると考えている。災害時に助け合える関係に繋がるためだ。「飼い主同士のコミュニティを、愛する千歳烏山のために役立てられれば」と久保さんは願っている。

DATA
Dogsalon LiGAR

所在地:世田谷区南烏山4-3-14 ウィンヒルズ 104

主な事業:ペット業(トリミングサロン)

連絡先:03-6279-5485

営業時間:10:00~19:00 、土・日曜、祝日~20:00

定休日:水曜

推薦者
東京青年会議所世田谷区委員会 増田拓真