PEOPLE

世田谷という地が多様性ある魅力的な
「働くひと」たちの場であること、

地元に素敵な店舗や企業がいることを発信していきます。

JA東京中央ファーマーズマーケット千歳烏山 店長 本橋 純さん
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南烏山

もっと、世田谷に特化したお店にしたい!

JA東京中央ファーマーズマーケット千歳烏山 店長 本橋 純さん

世田谷産の野菜が店頭にずらり!

 JA 東京中央が運営する農産物直売所「ファーマーズマーケット」は千歳烏山と二子玉川、杉並区荻窪に3店舗あり、千歳烏山店が栄えある1号店。同店がオープンに至るまでの経緯が面白い。店舗が建つこの場所にはかつて駐車場があり、地元の農家がその空きスペースに採れたての野菜を持ち寄って、販売していたそうだ。そこに直売所をつくる案が浮上し、平成22(2010)年にオープン。今年で11年目となる。現在では、農産物を卸している農家の数は世田谷区に41人、杉並区に3人いる。

  • 世田谷産の野菜コーナー

    世田谷産の野菜コーナー

  • 立派な大きさの栗も世田谷産

    立派な大きさの栗も世田谷産

 取材に訪れたのは、9月の平日の午後。地元の住民がひっきりなしに訪れ、大盛況である。この人気店を任されているのが、店長の本橋純さん(48歳)だ。本橋さんは店長に就任して4年目だが、もとはレジの機械を販売する会社で、営業をやっていた。何を隠そう、現在店舗で使われているレジは本橋さんが納めた品物なのだ。退職後は、吉祥寺の農協の直売所を手伝ったのち、ファーマーズマーケット千歳烏山店に移り、現在に至る。本橋さんは店の魅力をこう語ってくれた。「9月は農産物がもっとも少ない時期。それでも、ありがたいことに当店を贔屓にしてくださる方は多く、開店前から列ができることもあります。店頭の農産物は世田谷の農家がつくったものが中心で、しかも朝採れなので鮮度抜群です」
世田谷といえば住宅街や商店街のイメージが強いが、実は、都内屈指の農作物の宝庫である。視察で区内各地を回った本橋さんが、「世田谷にこんなに農地があるんだ!」と、歓声を上げたほどだという。

インタビューに応じてくれた店長の本橋純さん

インタビューに応じてくれた店長の本橋純さん

「トマト、キュウリ、ナス、ホウレン草、小松菜は世田谷を代表する野菜です。冬が近くなれば大根や白菜も並びますし、食卓に並ぶ野菜のほとんどを世田谷産で揃えることだってできるんですよ。珍しいものでは大蔵大根のような江戸野菜、さらには青パパイヤやパッションフルーツ、島唐辛子などの南国の農産物をつくっている農家もいます」
本橋さんがそう太鼓判を押すほど、農産物のバリエーションが多いのが特徴で、実際に訪れた世田谷区民もびっくりするという。ファーマーズマーケットは、地域の魅力の再発見につながるお店なのだ。

本橋さんイチ押しの世田谷産の枝豆、ナス、ホウレン草、栗

本橋さんイチ押しの世田谷産の枝豆、ナス、ホウレン草、栗

本橋さんが挑む理想の店づくり

 ファーマーズマーケットの一番のウリは、生産者の顔が見えることである。商品のラベルには生産者の名前と、町名まで記されている。そのため、「この人のつくった野菜を買いたい」と、指名買いをするお客さんまでいるほどだ。安心・安全へのこだわりも特別なものがあると、本橋さんが言う。「農家さんたちには農薬を使った履歴も提出してもらっているので、安全性に自信があります。そもそも、世田谷は住宅街の近くに農地があるので、ヘリコプターで農薬を散布することができません。面積も地方ほど広くはないぶん、生産者の目が行き届く丁寧な農業ができるのです」
 本橋さんはしばしば、農家のもとに足を運び、コミュニケーションを取るようにしている。どんな野菜をつくっているのかなど、具体的なヒアリングを行い、店側から様々な提案をすることもあるそうだ。
「2月や9月は地元の商品が少ないので、空いている棚を他から仕入れた野菜で埋めたことがありました。ところが、あまり売れなかったのです。やはり当店のお客さんは世田谷産を求めているんだなとわかりました。そこで、9月に収穫できるように枝豆やホウレン草をつくってもらえないかと、農家と協力する機会も増えました」

ラベルには生産者の名前と町名が記されている

ラベルには生産者の名前と町名が記されている

 千歳烏山駅周辺は世田谷でも有数のスーパーマーケットの激戦区だ。そのため、本橋さんは他店との明確な違いを打ち出そうと、奮闘している。やむを得ず他の産地から仕入れるときも、スーパーには滅多に並ばない珍しい野菜を選ぶという。また、取材当日に行われていた「北海道フェア」も、地元の人たちの想いを大切にする本橋さんらしいイベントだ。
「千歳烏山って、地方出身者が結構住んでいるんですよ。コロナ禍で帰省が難しい時代ですから、ふるさとの味を思い出していたただこうと始めたのが、ご当地フェアです。九州、長野、北海道など、1カ月おきに様々な地方にクローズアップするようにしています」

北海道産の野菜や果物が集結する「北海道フェア」

北海道産の野菜や果物が集結する「北海道フェア」

世田谷の農業を守っていきたい

 農家の高齢化や農地の減少は全国的に進んでおり、それは世田谷も例外ではない。農家から相談を受けることも多い本橋さんは、世田谷の農業の未来をどう考えているのだろうか。
「都市農業を始める人が、これから爆発的に増えることはないでしょう。しかし現在も続けている農家さんはみんな誇りをもって農業をしている人ばかりです。その情熱に応えるため、農家の所得をアップさせる方法はいつも考えていますね。店を通じて、世田谷の農業を守っていきたいと思います」

品出しの様子

品出しの様子

 JA東京中央では、納入された地元の野菜を地元のレストランに配分する取り組みも始まっている。本橋さんはその橋渡しもしているそうだ。また、地元の子どもたちに農業に関心を持ってもらおうと、職場体験を受け入れたり、夏休みの自由研究にも協力を惜しまない。ほかにも、「こども食堂」への野菜の提供など、地域貢献にも取り組む。
 併せて、従業員の働き方改革も進めている。たとえばパートさんには、レジ打ちだけでなく、お米や加工品などの発注業務を任せている。これは当事者意識を高め、店への愛着を高める取り組みなのだという。また、3カ月に1回のペースで従業員と面談を行い、悩み相談にも応える。その結果、チーム一丸となって働ける職場に変化しつつある。

店頭に並んだ商品をチェックする

店頭に並んだ商品をチェックする

 本橋さんが思い描くのは、さらなる大胆な店の改革だ。
「もっと世田谷に特化してもいいのかなと思います。お店の利益の追求は必要ですが、他の地区の野菜の仕入れをなくして、世田谷区産だけで埋め尽くするのもありなのではないか……と。たとえば、農作物が少ない時期はあえて営業時間を短縮し、売り切れたら閉店する。一方で、大根がたくさん並ぶ冬は営業時間を長くして、夜遅くまで仕事をしたサラリーマンも立ち寄れるお店にしたいですね」

広々とした店内には新鮮な野菜や果物、加工品などが並ぶ

広々とした店内には新鮮な野菜や果物、加工品などが並ぶ

 世田谷産を求めるお客さんの気持ちに応えるために、「このくらい振り切れてしまっていいんじゃないか」と、本橋さんは笑いながら話す。世田谷を愛する想いや培ってきた農家との信頼関係、そして農作物のクオリティへの揺るぎない自信が、本橋さんの原動力になっているのだ。

旧甲州街道沿いに佇む

旧甲州街道沿いに佇む

DATA
JA東京中央ファーマーズマーケット千歳烏山

所在地:世田谷区南烏山6-28-1

主な事業:小売業

連絡先:03-5313-7711

営業時間:10:00~18:00

定休日:木曜

推薦者
世田谷区農業青壮年連絡協議会 会長 髙橋 正実