三軒茶屋
創業100年。さらに先の未来に向かって走り続ける、5代目の新たな挑戦
有限会社大黒屋(だいこくや) 代表取締役 浅沼啓之さん
東京・八丈島にルーツを持つ三軒茶屋の老舗
三軒茶屋のキャロットタワーの地下1階『三軒茶屋 東急ストア』の一角に店を構える『大黒屋』。1921年に創業し、今年で100周年を迎えた、あられせんべいの店だ。『大黒屋』の創業者は八丈島でせんべい作りを学び、品川、麻布を経て、この地へ。キャロットタワーができる前から、現在の地で⾧年に渡って店舗を構えていた。そしてキャロットタワーの竣工後は、ビル内で商売を続けている。その歴史を新たに受け継いだのが、5代目の浅沼啓之さんだ。
「私が生まれる前は、三軒茶屋の工場でせんべいやあられを作り、販売していました。子どもの頃からせんべいの袋詰めなどを手伝っていた記憶があります。大学在籍中に3代目の父が亡くなり、卒業後はアパレルやIT関連の仕事をしていましたが、28歳の時に4代目の母に相談し、家業を継ごうと決意しました。そして2018年から、5代目代表取締役として『大黒屋』を受け継いでいます」
5代目として地元への感謝を伝えたい
家業を受け継ぐにあたってまず浅沼さんが行ったのは、IT化の推進。それまで経験した仕事で携わってきた能力を発揮し、ホームページの作成やEC事業へと乗り出したのだ。また、生まれ育った三軒茶屋への貢献にも関心を示し、地元との結びつきを強めてきた。
「弊社は、事業の手を広げずに小さく、コツコツと三軒茶屋で商売を続けてきました。私が受け継ぐにあたり、いままで弊社を贔屓にしてくださった三軒茶屋や世田谷区の皆様に対して何か恩返しがしたいという気持ちが強くあり、世田谷区の地域団体の集まりにも積極的に参加し、地域のために何かできることはないかと情報交換をしてきました」
世田谷生まれの商品とのコラボで地域貢献
そこで生まれた商品のひとつが、「世田谷エールおかき」。地元世田谷を応援し、地元から人々を応援するために作った、世田谷生まれの“応援菓”だ。『メガホンとビアグラスは形が似ている。きっと、応援と乾杯は力を引き出す元気の源になる!』。そんな想いを込めて名付けられた。また、経堂で醸造されるエールビールの醸造家と一緒に、ビールに合う手土産として作った「大人のおかき」は、国産の消費拡大に向けた国民活動を推奨する「フード・アクション・ニッポン アワード 2020」において国産農林水産物の消費拡大や地域の食材・食文化の活用など創業的な評価を受け、優良産品として「入賞」100産品にも選定された。
八丈島を旅して出会った特産物を取り入れた新商品
3 年前の代表就任後すぐに、創業者が修業した『大黒屋』のルーツでもある八丈島の特産物を使った商品も新たに開発した。
「自分たちのルーツが八丈島にあることを、以前は意識していなかったのですが、自社の歴史を再度見つめようという想いで改めて八丈島を訪れました。八丈島は、豊かな自然が残っている地であり、まだ知られていない魅力もたくさんあります。島を旅して、そこで出会った島ならではの特産品を取り入れた『浅沼煎餅』を作りました。これまで培ってきた伝統の味を残しつつ、八丈島で出会った素晴らしい食材を取り入れた、斬新な味わいにチャレンジした新たなあられせんべいが生まれました」
八丈島の特産品である明日葉や島とうがらし、海風にさらされながら育つしいたけ、岩のりなどを原材料に加えたこのせんべいが、同じ東京都である八丈島と世田谷・三軒茶屋を海を越えて繋ぐ存在でもある。
故郷・三軒茶屋とともに発展していく
現在は社員9人で店を切り盛りする『大黒屋』。かつては浅沼さんも店頭に立っていたが、信頼できる従業員たちに囲まれ、いまは店を任せ、未来への試みへ積極的に投資している。
「今後は世田谷ブランドの浸透を図るため、世田谷区の観光業促進と同時に、地域名産の魅力を発信、そして多様性ある雇用を創出することを考えています。せんべいや世田谷のモノ・コトを通じて世田谷の魅力を表現していき、大切な地域とお客様の未来のために貢献できることを探求して挑戦し続けます」
移り変わりの激しい三軒茶屋の地で商売を100年続けている店は、数えるほどしかない。伝統を守りつつ未来へ向けて躍進する『大黒屋』は、なによりもその感謝を事業の中心に置きながら、これからも地域の人に愛され続ける店として変わらずにこの地で商売を続けていくだろう。
- DATA
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有限会社大黒屋(だいこくや)
所在地:世田谷区太子堂4-1-1 キャロットタワーB1F 東急ストア内
主な事業:小売業(菓子製造)
連絡先:03-3421-5008
- 推薦者
- 東京商工会議所世田谷支部青年部 臼井 淳一郎