PEOPLE

世田谷という地が多様性ある魅力的な
「働くひと」たちの場であること、

地元に素敵な店舗や企業がいることを発信していきます。

三昌工業(さんしょうこうぎょう)株式会社 代表取締役 武田雄二さん
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三軒茶屋

世田谷区という立地の良さと、 高度な開発力を武器に、 世界に挑むゴムの総合メーカー

三昌工業(さんしょうこうぎょう)株式会社 代表取締役 武田雄二さん

閑静な住宅地の町工場

 三昌工業は、4代目代表取締役に昨年就任したばかりの武田雄二さん(45歳)が率いるゴム製品の総合メーカーだ。昭和30(1955)年に世田谷区太子堂で創業し、今年で67年目。国内に生産拠点が 4拠点、海外に2拠点を構える。

本社の外観

 本社は三軒茶屋駅から徒歩で15分ほど。近くには世田谷観音や日本大学のキャンパスがある閑静な住宅街だ。社員が黙々と製品を検品している姿は、道路からもよく見える。なんと、社内の様子を見て興味を持ち、入社を決めた社員もいるのだとか。
「当社の主力は、自動車向けのOリングやガスケットのような液体、空気などの漏れを防ぐシール特性を持つゴム製品です。完成した自動車では陰に隠れてしまうことも多いのですが、当社のゴム製品は、安全・安心な自動車を生み出すために欠かせないものです」と、武田さん。

  • 動車などに使われるゴム製品の数々

    動車などに使われるゴム製品の数々

  • 出荷前の製品を丁寧に検品する

    出荷前の製品を丁寧に検品する

熟練の職人が生み出す細やかなゴム製品

 三昌工業の製品が国内外で高く評価されるのは、開発はもちろん、材料の分析ができる長年のノウハウがあるためだ。熟練の職人が在籍する製造部では、自社で開発した技術をもとに製品化している。
「当社では海外向けのゴム製品を扱っていますが、当然ながら、国によって日本とは気候がまるで違います。そこで、暑い地域に向けて耐熱性が優れたゴムを、逆に寒い地域には耐寒性の高いゴムをつくるといった細やかな提案ができるのが当社の強みです」と、武田さんが言う。
 また、老舗ならではの強みは、協力会社の多さだろう。武田さんは、営業担当に「とにかく依頼があればNOと言わないように」と話しているという。協力会社と連携することで、顧客のニーズにあったゴム製品を実現できるように努めているそうだ。

出荷前の製品を丁寧に検品する

出荷前の製品を丁寧に検品する

地域密着型の経営スタイル

 三昌工業は本社を3度移転しているが、ずっと世田谷一筋である。製造業でここまで“世田谷愛”の強い企業も珍しいだろう。いまや海外にも工場を置く同社が、世田谷に本社を置くメリットは何だろう。武田さんはこう話す。
「三軒茶屋は渋谷に近く、都心からの交通の便が圧倒的に良いですから、東京や神奈川のお客さんには製品を直接納めることができます。納入のときは、お客さんから生の声を聴き、製品の開発や改良に役立てています。また、社員にとっては通勤しやすいメリットもある。こうしたフットワークの軽さは、世田谷に本社を置く当社の武器だと思います」
 そんな地域密着型の経営を続けてきたこともあって、武田さんは世田谷に恩返しや地域貢献をしたいという想いがある。

4代目社長に就任したばかりの武田雄二さん

4代目社長に就任したばかりの武田雄二さん

「といっても、ゴム製品はなかなか特殊な用途の製品ですし、プレゼントして喜ばれるかどうかはわかりません(笑)。当社では昨年から、人体に負荷の少ない洗剤や除菌剤を販売しているのですが、それを児童養護施設に寄付するなど、できることから地域貢献に取り組んでいます」

 近年、企業が避けて通れない課題といえば、環境問題だろう。武田さんは、「環境負荷にならない製品をつくることは、製造業の使命」と言い切る。環境問題に向き合いつつ、品質も高め、顧客に喜ばれる製品を提供する。そのためには技術革新が不可欠だが、生産工程でも環境に負荷がかからないよう、廃材をリサイクルする試みも積極的に行っているそうだ。

同社の新製品、除菌剤を精製する様子

同社の新製品、除菌剤を精製する様子

コロナ禍と技術革新の中での挑戦

 そんな三昌工業も、昨年からのコロナ禍で工場の操業が停止するなど、大きな影響を受けた。まだまだ新型コロナウイルスへの警戒が続く中で、武田さんは新しい働き方への改革も熱心に取り組む。製造にかかわる部分こそ難しいものの、事務的な業務ではテレワークを推し進めている。また、社員の生活を守る長期雇用にも積極的である。
「定年はありますが、希望すればどんどん働ける職場です。当社のような製造業の現場では、ベテラン社員の力が大きい。ベテランの知識やノウハウは新人の育成という面でプラスになりますし、若い社員の精神的な安心感も大きいんですよ。若い世代から年配まで、幅広い世代が安心して働ける環境を作っていきたいですね」

武田社長と従業員の皆さん

武田社長と従業員の皆さん

 コロナ禍によって社会は一変した。また、自動車の世界も大きな変革期にある。現在は、ガソリン車から電気自動車(EV)への転換が進みつつあり、世界中の自動車メーカーで熾烈な開発競争が行われている。三昌工業のゴム製品は、主にガソリン車向けの製品だが、2030年までには大半の自動車が EV に移行するという予測もある。武田さんは、この100年に一度といわれる変革期を、どう乗り切ろうとしているのだろうか。

出荷に使われるケースも歴史を感じさせる

出荷に使われるケースも歴史を感じさせる

「まず、この世界的な潮流に逆らっては、10年後には売上が半分以下になっていくのではないかという危機があります。EVでもバッテリーやモーターにもゴム製品が欠かせませんから、ゆくゆくは当社もEV向けの製品にシフトしていくと思います。また、私はこれを機に自動車以外の分野にも目を向けています。例えば、電子部品や電化製品など、これまでお付き合いがなかった企業とコラボした商品を生み出してみたいですね」

検品前の製品。やがて国内外に出荷される

検品前の製品。やがて国内外に出荷される

 武田さんのもとで生まれたユニークなコラボ商品のひとつが、磁石メーカーとコラボし、強力な磁石の表面を三昌工業のゴムの膜で覆ったフック製品。現在販売に向けて開発中である。武田さんはこう意気込む。
「異業種とのコラボは今後も増えていくと思いますし、私も予測しなかった商品が生まれるかもしれません。こうしたコラボは、製造現場のノウハウも増えるので、メリットが大きいのです。そして、様々な企業と交流しやすいのは世田谷の強みですよね。立地を生かし、大きな変化の中、挑戦を続けていく企業でありたいと考えています」

  • 磁石メーカーとコラボして開発中のフック製品

    磁石メーカーとコラボして開発中のフック製品

  • 広々とした自社工場で製品が生まれる

    広々とした自社工場で製品が生まれる

DATA
三昌工業(さんしょうこうぎょう)株式会社

所在地:世田谷区上馬 1-34-17

主な事業:製造業(工業用ゴム製品)

連絡先:03-3424-4171

推薦者
世田谷法人会青年部会 竹内 維寿