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株式会社中秀工業(なかしゅうこうぎょう) 代表取締役 中村大路さん
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池尻大橋

学校建築のスペシャリスト集団が、校舎の耐震化に挑む

株式会社中秀工業(なかしゅうこうぎょう) 代表取締役 中村大路さん

土木から学校まであらゆる建築を施工

 中秀工業は東京大学に程近い文京区本郷の地で、代表・中村大路さん(47 歳)の祖父が立ち上げた建設会社だ。同社は昭和 33(1958)年の創業で、中村さんはその 3 代目に当たる。創業当初は測量や土木などの仕事が多かったが、2代目の頃に学校関係の工事が増え始める。やがて設計の仕事も受けるようになり、設計から施工、改修まで総合的に手掛ける建設会社へと成長した。中村さんがこう説明する。
「当社の主な仕事は公共工事ですが、窓ガラスひとつから請け負います。これは、先代が大切にした『小さな仕事をコツコツ』という理念を大切にしているからです。そして、もっとも得意とするのが学校建築。これは、創業の地が本郷であったことと切っても切れない関係があります。実は、東京大学の本郷キャンパスにある建物の改修工事を行うことが多いんです」

中秀工業の社章が輝くヘルメットと工事の書類

 東大本郷キャンパスといえば、大正~昭和初期に完成したゴシック様式の重厚な建築群で知られる。建築史の観点からも価値が高く、登録文化財になっているものも多いが、一方で教授や学生が使用する現役の校舎でもある。歴史の重さゆえに改修もひと苦労だ。配管ひとつとっても、現代の建築のように合理的にはできていないし、現代の耐震基準と異なる構造で建てられたものも少なくない。歴史的な佇まいを重んじながらも、最新鋭の教育施設として改修するという、難しい仕事が求められるのだ。
「東大の歴史的建造物の工事に携わってきた実績を、様々な場面で生かせるのが当社の強みですね」と、中村さんが力説する。

  • 耐震工事は夏休み期間中に行われる

  • 工事前に足場や建物の状態を確かめる

長年培った技術が世田谷で生きる

 池尻大橋に本社を置く中秀工業は、世田谷区内からの仕事の受注実績も数多い。今回、中村さんの案内で、耐震補強工事の真っ只中という世田谷区立太子堂中学校を訪れた。社員がパソコンに表示された図面と向き合い、その横では職人が頻繁に出入りしている。聞けば、生徒がいない夏休みに合わせて工事を始め、新学期の開始と同時に工事を終えるのだという。1カ月前後しか日数がないため、スピーディーかつ安全な仕事が求められる。

技術室には強度を高める建材が取り付けられた

技術室には強度を高める建材が取り付けられた

 中村さんが「技術室」の耐震工事の現場を見せてくれた。ちょうど壁や天井板の仕上げが終わったところで、築50年近い校舎とは思えない、新築同様の輝きを放っていた。新学期早々、登校した子どもたちはきっと歓声をあげるだろう。耐震補強の建材は空間に自然に溶け込み、威圧感がまったくない。学校を使う生徒への優しさやぬくもりをも感じる空間だ。さすがは、学校建築を得意としている中秀工業ならではの仕事である。

新築のように美しく仕上がった

新築のように美しく仕上がった

 高度経済成長期、世田谷区の人口は急増し、各地に学校が建てられた。しかし、竣工から 40~50 年の年月が経過した昨今、耐震化が求められる校舎も少なくない。そもそも学校は未来を担う子どもたちの教育の場であるだけでなく、災害時には住民の避難場所にもなるインフラである。耐震補強の重要度が高まる現在、中秀工業は先進技術の導入にも余念がない。中村さんは、こんな想いを語ってくれた。 「耐震補強工事も日夜いろいろな工法が開発されていますから、新しい技術を学び、現場に合った最善の工事を行うように努めています。また、東大のように、レンガやタイルのひとつにも、設計者や関係者の気持ちが込められた建築はたくさんあります。施工前よりも建物の使い勝手や魅力が向上するような仕事をしたいですね」

図面と向き合い、工事の進み具合を確認

図面と向き合い、工事の進み具合を確認

雇用を守り、世田谷全体を盛り上げる

 高い技術力で各地の仕事を請け負う中秀工業が、世田谷に本社を置くメリットは何だろうか。
「世田谷区では、事業者の育成ということで、地元の建設会社が入札に参加できるようにサポートしてくれています。そのおかげで、普段はあまり受注できない仕事ができることが多いんです。技術を磨くのにこれほど適したエリアは、他にありません」
 その一方で、建設会社特有の悩みもある。建設工事といえば、いわゆる3K(きつい、汚い、危険)の代表格というイメージを持つ人も少なくない。中村さんも、若手の人材確保を経営の最優先課題に挙げる。また、女性の社会進出を応援すべく、働き方改革や生産性向上を目標にしているそうだ。
「生産性を上げるための取り組みも行っています。例えば、工事でもっとも時間がかかるのは、工事中に撮影した写真の整理なんです。そこで、最新のソフトや機材を取り入れ、作業の効率化を図っています」

「世田谷に貢献したい」と語る中村さん

「世田谷に貢献したい」と語る中村さん

 また、世田谷区が行う、60歳からの働き方を支援する「R60‐SETAGAYA-」にも参加。ベテランと若手の交流や、技術の研鑽にも取り組む。
「世田谷区は、地域の仕事は地域の会社が“オール世田谷”で行えるように、バックアップしてくれます。私たちも、こうした想いに仕事で応えたいと思っています」

若手からベテランまで社員の年齢層は幅広い

若手からベテランまで社員の年齢層は幅広い

 中村さんは、コロナ禍においても雇用を維持するとともに、プロフェッショナルを目指したい新人の登用も積極的に行いたいと話す。その先にある夢は何だろうか。中村さんがその問いに対し、情熱的に話す。
「私は建築が好きで、安藤忠雄さんや、磯崎新さんの作品を見に行くことも多いんです。優れた建築を見ると、やはり心が動かされますね。当社もそういった建築をつくっていきたいと思いますし、ゆくゆくは、誰もが知るランドマーク的な建物を自社で施工することが夢です」

中秀工業の事務所は池尻大橋にある

中秀工業の事務所は池尻大橋にある

DATA
株式会社中秀工業(なかしゅうこうぎょう)

所在地:世田谷区池尻 3-28-9

主な事業:建設業

連絡先:03-3811-5849

推薦者
北沢法人会青年部会 石井 博晶